瀬戸川渓谷の秘境
岩の要塞に囲まれた「剣ヶ岳」
藪の要塞に守られた「天賓阿礼(てんぴんあれ)」と「山ノ神ノ森」を歩く
瀬戸川渓谷の秘境 岩に守られた「剣ヶ岳」 剣ヶ岳の隣にある「一ノ谷山」ピーク
藪の砦に守られた「天賓阿礼」(てんぴんあれ) 同じく藪の砦に守られた「山ノ神ノ森」
7年前にはるちゃんやリップさんから瀬戸川渓谷の「剣ヶ岳」レポを頂いた。さっそく瀬戸川渓谷の展望所に自転車を置いて
剣ヶ岳〜三角点「一ノ谷山」〜天賓阿礼〜稲村ダムの周回をした。その時に17番鉄塔から三角点「山ノ神ノ森」への尾根へ
少し踏み込んでみたが獣道さえ見つからない笹薮の為諦めたのだった。それ以来「山ノ神ノ森」への宿題感が残ったまま過ご
して来てしまった。
その為に今回のルートを剣ヶ岳〜天賓阿礼〜山ノ神ノ森の周回とした。
7年前の剣ヶ岳〜一ノ谷山〜天賓阿礼〜稲村ダムの記録は ここ
瀬戸川渓谷にある「山ノ神」神社 (大山祇神社)
先ずは下山地の「山の神・神社」(大山祇神社)を確認する。と言うのは三角点名「山ノ神ノ森」は恐らく山麓に山ノ神・神社
があり、そこから名付けられたに違いないと考えた。地形図にも瀬戸川の川を隔てた場所に神社(鳥居)マークがある。
稲村ダムから瀬戸川渓谷への車道を進むとトンネルの手前に鳥居が有った。そこから瀬戸川に向かって道が下っているではない
か。地形図の神社マークからは少し離れているが、これが「山ノ神」神社への参道に違いないと鳥居を潜る。川面に出ると昔、
橋が架けられていた様なコンクリートの痕跡がありそこを渡渉する。左手に少し進むとビンゴ!神社があった。
お参りを済ませて開戸を開けると中に「(五十八社)大山祇神社」のお札が置かれていた。
「大山祇神社」は大山祇命(おおやまつみのみこと)又は大山積神(おおやまつみのかみ)と呼ばれる山をつかさどる神様を祀
る神社だ。瀬戸内海の大三島にある大山祇神社が有名なのだが、ここから分祀を受けた同じ名前の神社が全国にあり我が故郷新
居浜にも銅山稼業の安全を期して麓と山中に有る。
一般的に大山祇神社の祀る神は山岳丘陵の守護神で、又山の樹木が雨水を溜める事から水源、水利、水運の守護神とされる。
この神様の立ち位置はイザナミノミコトの子供で、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)の父ちゃんらしい。
神社の裏山を見ると急斜面ではあるが、何とかスペースもあり下山時に問題無さそうである。但し、この神社訪問でそこそこの
時間ロスになってしまった。この出発時間の遅れが後々の徹夜歩きになろうとはその時は想像もしていなかった。
(山ノ神)大山祇神社への鳥居 (瀬戸川渓谷右岸林道) 瀬戸川渓谷を対岸へと渡る
渡渉して左側に進むと「山ノ神」神社があった 中に置かれている銘板を見ると「五十八社大山祇神社」とある
地元の方達による補修作業も行われている様だ 舗装道路に向かって参道を車に帰る
2022年3月20日(日)
瀬戸川渓谷展望所〜一ノ谷林道〜成川橋〜剣ヶ岳〜一ノ谷山(三角点)〜20番鉄塔〜18番鉄塔〜天賓阿礼
(てんぴんあれ・三角点)〜17番鉄塔〜山ノ神ノ森(三角点)〜尾根北東肩部〜瀬戸川渓谷展望所へ引き返す
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 瀬戸川渓谷展望所〜剣ヶ岳〜一ノ谷山〜天賓阿礼〜山ノ神ノ森〜瀬戸川渓谷展望所
08時40分展望所から岩の要塞に囲まれた「剣ヶ岳」を眺めた後、遊歩道を瀬戸川へ下る。ここにはしっかりした吊橋が掛
かっており、以前は瀬戸川渓谷美と滝見見物の遊歩道だったのだろう。現在は吊橋を渡った所で遊歩道は荒れており手前の滝ま
でしか行けない。
7年前はここから直接滝のある谷に下り、剣ヶ岳の斜面に取り付いた。
ノ谷林道(程野黒丸線)へ鉄塔巡視路を伝って上がり、舗装道路を歩き上流部の「成川橋」に出る。もしそこから剣ヶ岳への
道がちゃんと有れば今回歩くログが他の登山者への参考になると思い遠回りをした。
「瀬戸川(渓谷)」は吉野川の支流で稲叢山東尾根から稲叢山と稲村ダム、南側のアセビで有名な陣ヶ森北面を源流にして
大川村の大川橋付近で吉野川本流に流れ込む。川の名前は上流にある「瀬戸」集落から来ていると思われる。
08時50分瀬戸川渓谷にかかる吊橋を渡るが水が澄んでとても美しい。橋を渡るが、その先の遊歩道はとても荒れている。
途中から鉄塔巡視路の鉄杭に沿って傾斜を上がると対岸に迫力のある立派な滝が見える。この滝の水は剣ヶ岳・一ノ谷山尾根
と今回初めて歩く「山ノ神ノ森」尾根の間から流れ出ている。
瀬戸川渓谷に流れ込む支流の谷間に聳える「剣ヶ岳」 岩の要塞に守られている
天墓所から瀬戸川を見ると立派な吊り橋が架かっている
08時40分 遊歩道を瀬戸川へと下って行く 吊り橋を渡る
水はあくまで澄んで美しい 荒れた遊歩道が少し続く
鉄塔保線路の鉄柱に沿って斜面を上がる 道は何故か長くは続かなかった
対岸には一ノ谷山尾根と山ノ神ノ森尾根との間から流れ出る立派な滝がある 7年前はここから谷に下りて向かいの斜面に取り付いた
沢に下って対岸の斜面に取り付いた方が剣ヶ岳には勝負が早いのだが、道の無い崖のログなど登山者への参考にもならないので
我慢して09時43分上の林道「程野黒丸線」へ上がる。ここまで既に1時間もかかってしまって少し後悔する。舗装道路を歩
いていると橋近くのコンクリート支柱には「広域基幹林道・程野黒丸線」と記されていた。
程野は瀬戸川の西にある戸中山南面の地名で、黒丸は瀬戸川渓谷の下流(東側)にある集落名である。
対岸の剣ヶ岳、一ノ谷山への斜面は切り立っている 7年前はここから沢沿いに進み対岸から斜面に取り付いた
遊歩道が無くなり、未舗装林道へ這い上がって進む 09時43分舗装道路に出た (程野黒丸線)
道路から対岸の一ノ谷山と剣ヶ岳を見る 剣ヶ岳も左手から回り込めば道があるのでは? (実際は無かった)
「平成12年度 広域基幹林道開設事業 程野黒丸線工事」 09時50分 「成川橋に出る」
剣ヶ岳へ
カシミールソフトを利用したGPSトラックログ図 剣ヶ峰へのルート
09時50分「成川橋」に着くと、橋を渡った場所から谷の左岸に沿って少し荒れ気味の道が続いている。これが剣ヶ岳への
登山道だろうかと今度は沢の左岸に沿って下流に向かう。
しかし、この林道は10分も歩かない内に行き止りになった。その辺りには赤テープがあり瀬戸川渓谷の谷部へ向かって下る方
向にテープが見られた。しかし、正面や上に向かってはテープも道も見当たらなかった。
そう言えば、はるちゃんから当時頂いたログ図にはここから一旦谷沿いに下り、その後斜面を這い上がり剣ヶ岳をグルリと回り
込む水平道を伝って北側から一ノ谷山と剣ヶ岳のコル部に這い上がっていた。しかし今更そんな悠長なルートでは到底今日の最
終目的地である山ノ神ノ森には行けない。
10時00分結局藪の薄い谷部に取り付いて直登する事にした。大きな沢とか谷は途中に滝に出会ったりするのだが、藪の中に
続く小さな谷筋は逆に歩き易いルートになる。予想通り順調に高度を上げて30分程で前方に岩壁が現われ7年前に確認した
水平道に出る。
この水平道は境界を現す赤テープが置かれた剣ヶ峰を岩壁に沿って回り込む不思議な道で、岩壁は20m程の高さで垂直に切り
立って剣ヶ岳を取り囲んでいる。
橋を渡ると左岸に沿って下流へ林道が続いていた しかし8分程歩くと道が無くなった 沢に向かって赤テープがある
道が切れた付近の藪が薄い沢沿いを進む 植林帯になると崩落防止の石垣なども見られた
植林帯の中に大岩もある 10時35分前方に岩壁が現れ水平道に這い上がる
水平道に上がって左手に少し進んで見るがとても登れる状態では無い。右に回り込みながら岩の弱点を探す。すると7m程の高
さで岩の割れ目があり上の端に雑木が生えいる。その上部にある岩場も何とか這い上がれそうだ。何とか岩に背中を擦りつけな
がら最初の岩場を這い上がる。
7年前に這い上がったルートでは無かったが、同じように岩崖を上がれば後は雑木帯となり比較的容易に剣ヶ岳まで進む事が出
来る。
、後は枝や幹を掴みながらピークを目指す。結局東側から剣ヶ岳へのまともなルートは存在しないって事だった。
巨大な岩壁が並び、ほぼ垂直なので這い上がるのは無理〜 この岩壁にそって境界割り出し作業のある水平道がある
境界割り出し作業の赤テープや境界杭がある 岩壁に沿って境界割り出し作業の水平道が続く
這い上がれそうな場所を探しながら右へ進む ずっと垂直の岩壁が続く
おっ! ここなら這い上がれそうだ (10時55分)
10分以上かけて上の岩棚まで這い上がる 更に上側にある岩を這い上がって樹林帯へ向かう
岩場を上がれば雑木帯で傾斜が緩くなる 岩山だけにシャクナゲも多い
剣ヶ峰 972m
11時17分三里登愛会がシャクナゲかネジキの幹に設置された「剣ヶ岳」の標識に出会う。そこでは全く展望は無いので先の
崖上に出て身を乗り出して瀬戸川渓谷の展望台を眺める。岩山からの眺めとしては愛媛、桜三里にある千羽ヶ岳や二ノ岳の方
が上である。
山頂標識に戻り、右から回り込む様にシャクナゲ尾根を下って11時30分コル部に出る。南側からこのコル部に直接上がる道
を期待したのだが、残念ながら無い様だった。
11時17分 剣ヶ岳の山頂標識が掛けられている 断崖の端に出ると天然檜越しに狭い展望がある
瀬戸川を挟んだ正面は三角点ピーク「朝日乃本」(1,125.7m) 川沿いに展望所が見える
スタート地点の瀬戸川展望所をアップで捉える コルに向かってシャクナゲの中を下る (テープも見られる)
右に回り込む稜線に沿ってシャクナゲ帯を下る 11時30分 コル部に出ると正面は植林帯となっている
一ノ谷山 1,025.35m
コルから「一ノ谷山」に向かっては笹薮の中に踏み跡があり、植林作業道を歩き11時40分三角点峰「一ノ谷山」に着く。北
側は切れ落ちているが植林の枝が重なって向かいの尾根が良く見えないのが残念だった。
細い植林作業道を辿って傾斜を登る 11時42分 一ノ谷山に着く
四等三角点「一ノ谷山」 1,025.35m (7年前はここに剣ヶ岳の標識が掛けられていた)
一ノ谷山尾根を西へと向かう (荒れた未舗装林道を伝って四電・高知幹線保線路へ)
一旦一ノ谷山基部へ下り、笹薮の細道を抜け12時00分広い林道に合流する。この辺りの尾根筋部は植林帯となっておりブル
押された広めの林道があちこちに存在する。しかし最近あまり使われていないらしく部分的に大変荒れていて車での走行は無理
な状態だ。
ここから笹藪の尾根を外して荒れた林道を西側にある四国電力・高知幹線へと進む。7年前は尾根筋近くの林道を歩き、何度も
分岐で時間ロスしたので今回は尾根を少し南側に外して林道を歩く。
12時40分地形図にある破線道と合流する。そこから鉄塔保線路を共有する林道を10分程歩くと左手に四電・高知幹線20
番鉄塔が立っていた。ここから基本的には北に向かい鉄塔保線路を19番、18番、17番と辿って行くのだ。
一ノ谷山の作業道を引き返し林道へ出る3分程は笹薮だった
荒れた未舗装林道を西へ西へと進む 今は使われていないのか少し籔いている箇所もある
前回は二又では右側を歩いたので今回は左側を歩く 12時45分 鉄塔保線路の指標杭が出ると道が良くなる
12時52分 林道の脇に鉄塔20番が見えた 5分程で鉄塔19番への少し細い林道へ入る
自然林の美しい保線路を北上する。簡単な沢を渡り13時40分尾根部に立つ18番鉄塔に着く。いよいよこの先の尾根が
天賓阿礼への東尾根ルートなのだ。一ノ谷山からここまで林道と鉄塔保線路の快適な道を歩いて来たのだが、それともお別れ
となる。
13時06分林道から別れて右手のの鉄塔巡視路に入る 美しい自然林の中に保線路のトラバース道が続く
13時15分 19番鉄塔を通過 7年前にも見た二又のリョウブ
ブナなどもあり非常に雰囲気の良い保線路だ こんな沢なら四電得意のグレーチング橋も不要だ
13時40分 18番鉄塔を通過する その先にある尾根部が天賓阿礼への取り付き口だ
天賓阿礼(てんぴんあれ) 三等三角点
天賓阿礼への東尾根ルートは7年前に歩いており笹藪ではあるが前半、中盤までは比較的歩ける許せる範囲内の藪歩きだ。
しかし、14時07分北尾根と合流すると猛烈な笹藪となる。
ここからはテープも見られて14時15分懐かしい天賓阿礼の三角点に出た。え?何じゃこれ? 境界割出し作業が行われて
おり付近の笹薮が刈られている。その上、三角点にも境界標石と同じように赤ペンキで塗られていた。ここ天賓阿礼ピークは北
側にある稲叢山から南に延びた尾根がここで西側の「戸中山」尾根と東側の「山ノ神ノ森」尾根に分かれる。どちらも猛烈な
笹薮に覆われた場所として有名だ。
しかし、意外な事に境界筋の笹が刈り払われて割り出し作業が最近行われた様だ。この境界割出し作業がどこまで続いているの
か確かめたい気持ちだが、今日の主目的は山ノ神ノ森なので諦める。
13時45分 保線路から別れて藪に突入する この辺りの笹薮は大した事は無い
兎に角尾根を外さない様に歩く ブナやモミなどが入り交ざる
14時05分 北西尾根に合流すると猛烈な笹薮になる 獣道を探しながら藪を泳ぐ
見覚えのある巨木を過ぎると・・・ あれ? 突然赤いペンキを塗られた三角点に出た
拍子抜けする様に境界割り出し作業が行われていた ショック〜
まあ 取り敢えず自撮り写真おば・・・ 境界割り出し作業区へ進みたいが、それでは鉄塔へ帰れない
熾烈な大藪との戦いが始まる
根は後に歩く山ノ神ノ森藪尾根に勝るとも劣らない大薮だった。7年前にもこの尾根をトライしたのだが、途中から尾根が不明
となりちゃんと歩けなかった程だ往路で這い上がった18番鉄塔へ下るんだったと後悔しながら半泣きで猛烈な笹藪を下る。
15時20分前方に背丈の高い鉄塔17番が見えてホッとする。フツーの良識ある登山者ならこの時間からは山ノ神ノ森へは諦
めて稲村ダムへ向かうだろう。でも今日の目的はあくまでも「山ノ神ノ森」なのだ。でもちょっと寄り道をし過ぎてしまった・・・
確認した山ノ神神社に下りて渡渉箇所も確認済みだ。(とその時には気楽にそう思ったのだった。)
目印のミズナラ辺りから北西尾根に向かわなければならない 突撃〜〜辛い〜〜
尾根ったってア〜タ ようわからんぜよ 中々立派なブナじゃのうし
ギョヘ〜 獣も歩いておらんぞ! 無我の境地で藪を漕ぐ
私はキリンになりたい・・・・ おぉ〜〜ぉ あれは四電様の鉄塔じゃおまへんか〜
15時22分鉄塔保線路に出た〜〜 高知幹線の鉄塔だけにデカくて高い (17番鉄塔)
山ノ神ノ森へ
17番鉄塔で暫く水でうがいをしたりして10分程給水休憩を取る。15時33分鉄塔裏の笹藪に突入する。前回確認した笹
薮は全く変化は無くそのまま有形文化財の如く保存されていた。背丈を凌ぐ笹薮の中に10cm程の獣道を探して潜るが、見つ
けた獣道は長続きはせず儚く消え失せる。
藪歩きは天賓阿礼の下山時に予行演習を行っているので覚悟は出来ている。厄介なのは笹薮だけでなく蔦が絡まっていたり、倒
木や落ちた枝が進路を塞ぐダブル藪、トリプル藪が結構多く出現する事だった。その上この辺りの笹は幹が太くで丈夫な為に足
に絡まると抜けなくなる厄介な物だった。
16時18分第一目標の1,326mピークを通過する。灌木が多く立っているのでそれを避けていると稜線を外し、又高い場
所を選んで東へと進む。
鉄塔の裏から笹薮が始まる! 突撃〜〜 最初は獣道(けものみち)を見つけて進む
ここの藪は笹だけでは無い 背伸びをすれば尾根だと確認出来る
その内 獣道も消滅する ここの藪には蔓(つる)も参戦してくる ひぇ〜〜
16時18分 地図を確認すると中間地点の1,326mピークを通過し、暫くすると右へのターニングピークと奥に三角点ピークが見えた
四等三角点「山ノ神ノ森」 1,332.48m (次三角点も有り)
16時50分尾根が南東に振るターニングポイントを慎重に右手に曲がる。三角点峰手前のコル部では藪の濃さは半端無く笹に
溺れながら進む。前方に見えるかすかな高みを目指して泳いでいると17時30分足元にコンクリートに埋め込まれた円形の三
角点を発見した。四等三角点でも花崗岩の角柱タイプもあるのだが、何だが拍子抜けする「山ノ神ノ森」四等三角点踏破だった。
このタイプの三角点は比較的新しく昭和から平成に設置されたのだろう。更に10m程笹薮を進むと明治時代の風格を備えた御
影石の「次三角点」が有った。この三角点は明治時代に農商務省山林局が国有林測定の目的で設置した物で「主三角点」「次三
角点」「補点」の三種類設置されている。
しかしその大部分が国土地理院の前身、(陸軍参謀本部)陸地測量部が全国に三角点を設置した時にほぼ重なるので置き換えら
れており現存する物は少ない。
天賓阿礼ピークから東に延びた藪尾根は山ノ神ノ森ピークで南側に張り出した後に北東方向へと高度を下げてやがて瀬戸川渓谷
へと消えて行く。但しこの尾根には北側や南側に向かって無数の支尾根が存在し非常に複雑な地形を成している。
足元に倒れている灌木で向う脛を何度も打ち付ける 痛て〜! 獣道(けものみち)があると幸せな気持ちになる
この様な美しい笹薮風景を今まで何度も歩いて来たのだが・・・ 尾根が右に曲がると少し登り傾斜になる
むむっ す・・す・・進めない〜〜 スマホ地図で確認するともうすぐ三角点だ
あれ? 足元に新しいタイプの三角点が・・・ 辺りを探すが他に御影石タイプは無かった
四等三角点「山ノ神ノ森」 1,332.48m 出来れば御影石タイプの三角点であって欲しかった・・・
更に少し先に藪を漕ぐと・・・ 古い「次三角点」があった
明治時代に農商務省山林局により国有林測定の目的で設置された「次三角点」はさすがに風格がある
三角点峰北東部の肩分岐で行き詰る
となるターニングポイントをクリアしなければならない。
あり少しルートを北側に逸れて修正し、17時55分ルート上に復帰する。
18時20分薄暗い中、ターニングポイント付近に着いて東側に下る尾根を探すが見つからない。暗闇の中で色々場所を変えて
東へ進もうとするが何処も崖の急斜面に阻まれる。どうも地形図上では簡単そうなルートだが、現場は結構厳しい地形だった。
ミズナラの大木が立つ藪尾根を先に進む リョウブ、ブナ、モミなどが並ぶ藪尾根
藪が濃すぎて下山ルートが把握出来ない この辺りから右に曲がるが急傾斜や崖に阻まれる
大藪アルプスでの大返し!安全策で来たルートを引き返す
19時20分ここは夜間に下るのは危険と判断して思案する。最初に考えたのは翌朝までビバークする事だった。しかし周りは
一面笹薮で休憩スペースすら無く、その上物凄く寒くなり冷たい風が体を急激に冷やす。う〜〜ん こりゃ低体温症になる恐
れがあるぞ。
大藪の夜間歩行に苦戦する
そうと決めたら取り敢えず三角点へと引き返す。21時頃、藪の酷い場所を避けて歩き高い場所に帰ったのだが、どうもそこか
ら逆方向へ歩いていたりとロスが多い。何せ背丈より高い藪の中では方向感覚が無きに等しくなる。
22時15分三角点付近に帰ると「表示杭」を偶然発見。四等三角点から少し離れている場所だったので付近に御影石の三角点
が無いか探すが見つからなかった。四等三角点付近に少しスペースがあったのでここでビバークをしようか再度思案する。何せ
引き返すのには相当の時間を要するのだ。暫く佇むが寒風が吹いて寒くてじっとしておれない。
点にも挨拶して22時55分鉄塔17番に向けて引き返す。確か剱岳でも徹夜で歩いたものだった。
22時15分 偶然三角点表示杭を見つける やはり付近を探すがこのタイプの三角点しか無かった
次三角点にも挨拶をして17番鉄塔へと引き返す 闇を照らすヘッドランプの明かりと月を頼りに藪を漕ぐ
01時20分北西方向の尾根が西側へ変わるターニングポイントを通過する。距離は大した事は無いのだが時間が物凄くかかる。
薮の密集帯が続く。高い場所だけを歩けず少し迂回するともう方角がどちらに進んでいるか分からなくなる。所謂(いわゆる)
グルグル廻しだ。
左上にあるお月さんを頼りに寒さから体を温めるように黙々と歩く
スマホ地図アプリ、ジオグラフィカの進行方向を示す矢印は見るたびにグルグル回って正確に進行方向を示さない。おまけにコ
ンパスすら変な方角を指す。ひょっとしたらスマホケースの蓋が閉じる様に磁石が付いたタイプを娘が買ってくれたのでそれが
原因かも知れない。
途中から左上に見えるお月さんで方角を確認しながら藪を漕ぐ。05時30分には辺りが薄暗く見える様になり尾根がはっきり
してくる。この様に大薮アルプスを非常に効率の悪い歩きを徹夜で行い06時05分振出しの17番鉄塔に到着した。
05時40分空が何となく白んできた 06時前になると薄明るくなった
06時05分 前方に背丈の高い17番鉄塔が現れる お〜〜 やっと藪から解放されたぜ〜〜
鉄塔保線路を「四電・高知幹線」 20番鉄塔まで引き返す
黒丸線」へと向かう事にした。
あ〜〜 登山道は楽や〜〜 06時15分頃から朝日が差して来る
周りの景色を眺める余裕が出て来た 鉄塔保線路から広い未舗装林道へ出て、20番鉄塔へ進む
林道「程野黒丸線」に下り、成川橋で昨日のルートに合流し出発点に帰る
20番鉄塔から更に昨日歩いた保線路兼用の未舗装林道を進んで、07時35分林道から分かれて保線路を「程野黒丸線」へ
と下る。地形図には少し先に効率の悪い破線道が記されていたが、実際の保線路はそれより短かった。
08時05分「程野黒丸線」の舗装道路に合流した。そこから成川橋で昨日のルートに合流して08時27分舗装道路から未
舗装林道を瀬戸川へと下る。しかし、昨日もそうだったのだが、この未舗装林道から瀬戸川渓谷には道が続いておらず、途中か
ら斜面を無理して下る。
07時36分 昨日歩いた林道と別れて下の「程野黒丸線」へ向かう 鉄塔保線路を舗装林道へと向かう
08時07分 林道「程野黒丸線」に下り付く 08時20分 昨日渡った「成川橋」を通過
08時30分 舗装道路からチェーンを越えて未舗装林道を下る 20分程下ると行き止まりとなるので左斜面を下る
荒れた斜面をテキトーに遊歩道へ向かって下る 鉄塔保線路か遊歩道に出て瀬戸川渓谷へと向かう
09時12分下の遊歩道奥に立派な滝があり暫く眺める。その後、瀬戸川清流の色を楽しみながら吊橋を渡り09時20分車に
帰りついた。
遊歩道近くの右岸にも立派な滝があった 09時15分 瀬戸川渓谷に架かる吊り橋を渡る
あくまでも蒼く澄んでいる瀬戸川渓谷 やっぱり昨日 剣ヶ岳へ行くのが遅すぎたわ
あ〜〜しんどかった〜〜 居眠り運転をせずに帰ろっと 次回はここからスタートだな・・・・・
今回も結果的にはスッキリ周回とは行かなかったが、意地でも目的の「山ノ神ノ森」三角点を踏んだ。反省点としては前日稲村
ダムで車中泊をして06時に出発していれば周回出来た可能性が高い。まあお陰で山ノ神ノ森三角点を2度も踏む事が出来てハ
ードだったが満足の山行となった。計画が甘いとか言われるのは私の山行では覚悟をしている。
まあ、剱岳と違って誰にも迷惑をかけず何とか無事下山出来たから成功と言えるだろう。
瀬戸川渓谷の秘境
山ノ神ノ森
今年(2022年)3月20日 瀬戸川渓谷、剣ヶ岳から一ノ谷山〜天賓阿礼〜山ノ神ノ森」の周回を行ったのだが、日没の為
地形が思ったよりも複雑で「山ノ神」神社へ下山出来なかった。
このまま引き下がるのは性格上そぐわない。予定した周回ルートを繋ぐ為、今度は神社から三角点「山ノ神ノ森」へ這い上がる事
にした
2022年4月2日
瀬戸川渓谷「大山祇神社」(山ノ神)〜三角点「山ノ神ノ森」〜大山祇神社
カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図 瀬戸川渓谷〜山ノ神ノ森(三角点峰) 往復
08時15分道路の広い場所に車を留めて、道路脇にある大山祇神社の鳥居を潜り瀬戸川へ下る。飛び石を選び何とか渡渉し
て対岸に這い上がる。
前回歩いた鉄塔17番から山ノ神ノ森までの大藪アルプス
道路から山ノ神ノ森は植林が邪魔して良く見えない 08時25分 鳥居を下る
割としっかりした参道が川面に続く 対岸に向かってコンクリートの橋脚跡がある
渡渉可能場所が3か所程有る 先ずは大山祇神社に出発の許可を得る(どうかオラを無事に返してケロ)
出来るだけ藪の薄い場所を選んで斜面を上がって行く。するといきなりドデカい岩が現われ、ここが単なる笹薮の山ではない事
を暗示する。
神社を出発して30分間は笹もパラパラと生えた傾斜を選べたが、09時を過ぎるともうそんな場所が無くなり大薮の斜面と
なった。
最初は藪の薄い場所を選んで斜面を上がる まあこの辺りは笹も細くて可愛らしい
高さ10m程のデカい岩がある 基本岩山みたい・・ 境界杭があるからこのルートで良い事を確信する
次第にワイルドな尾根になって来たぞ 09時08分 もう藪が薄い場所は無い・・・
うぎゃ〜〜 ギョヘ〜〜 岩の傍は多少隙間があるから助かる〜
時々岩の上に上がって尾根を確かめる 岩から下りると周りの地形が分からなくなる
藪の中の植林帯
猛烈な笹薮となる。
10時12分 あれ? 前方に植林が見えるぞ? 植林帯では藪が心持ち薄い 作業道を作ってくれ〜〜
この辺りの笹は茎が太くて硬い(スズタケかも?) 10時50分 植林が右手斜面に逃げていく・・・
初めての展望だがどこだか分からん 尾根が細くなると灌木が増えて歩にくいったらありゃしない
結構な岩場が出現
11時20分尾根が括(くび)れたちょっとした渡り廊下がある。こんな地形の場所が単調な藪尾根ルートでは重要なチェック
ポイントになるのだ。
ルートを探す。この辺りの岩場はほぼ左手を迂回して回り込む事が殆どだった。(帰りは右手から岩場を下る事を頭に入れる)
前方がワイルドな岩尾根の様相を成してくる 相変わらずの笹薮だが岩が現れだした
11時20分 細尾根の括(くび)れ部を通過 くびれ部の向こうに細尾根の急斜面が続く
11時27分から暫く岩尾根が続く事になる 直登が出来ない岩部が多い
う〜〜ん 弱点が無いので迂回するしか無いわ 左手を這い上がっても進むのが厄介だ
やはりこんな崖がある場所は夜間に下るのは無理だった 地形図からは読み取れない岩場だった
左から岩下を迂回する どこかで上部へ復帰しなければならないのだが・・
11時50分岩場の核心部を這い上がる そして平和な(?)笹薮に復帰する
尾根の難しいターニングポイント
12時を過ぎると岩場も終わり、又深い笹薮へと突入する。この辺りの笹薮も非常に深いので進む方角が分かり辛い。前回に
諦めた尾根のターニングポイント付近まで上って来た事をジオグラフィカのログで確認する。(ちなみに前回のログはこの
辺りで右や左に振れ回ってその時の苦労が軌跡に現れている。)12時15分天然檜の巨木があり、この辺りが前回夜に来た
であろう尾根のターニングポイントの目印にする。
深い笹薮で前回、この辺りまで下って来た事をログで確認 12時15分 天然檜の巨木をターニングポイントの目印とする
前回この特徴的な倒木と根の絡まった姿を夜に見た記憶がある 次第に傾斜が緩やかになってきた
「山ノ神ノ森」を瀬戸川渓谷から再訪する
12時25分倒れた幹に根が沢山付いた景色も前回見た覚えがあった。天然杉とモミが立つ笹薮を進むと見覚えのあるリョウ
ブやミズナラの大木が見え、12時55分 次三角点に着く。この愛嬌のある三角点を眺めて懐かしい気持ちになる。
13時04分奥の四等三角点「山ノ神ノ森」(標高1,332.48m)に再会し、もう一度辺りを調べるがやはり少し離れ
た場所にある三角点表示杭しか見当たらなかった。
この付近には三角点の周りにしか休憩スペースは無い。今日も歩くのを止めると気温が低くて寒くなる。サーモボトルに用意し
て来た暖かいコーヒーを出して水でうがいをした後昼食休憩を取る。
葉っぱを見るとこの辺りは天然檜(ヒノキ)が多い ブナやミズナラの立つ笹薮を三角点へと向かう
このミズナラの大木が見えたら三角点は近い
12時55分 次三角点を踏む 周りの笹薮を少し刈ってお化粧直しをする
やっぱ記念写真は明治時代の「次三角点」だね 靴は去年剱岳の岩稜を歩きすぎて底がボロボロ (?がれを補修材で補強)
四等三角点「山ノ神ノ森」 何故か表示杭が離れた場所に立っている
狭いスペースで昼食休憩 ホットコーヒーにビスケット 最高の気分〜〜 ザックは日帰り専門のミステリーランチ クーリー25
下山開始〜 下りも大籔では時間がかかった (やはり下りで難しかった尾根のターニングポイント)
油断をするとやはり左手の支尾根へ向かってしまい、見慣れぬヒメシャラが現れた。スマホ地図で確認するとやはり左の支尾根
に向かっていた様だ。藪を苦労して右手に回り込み14時07分上ったルートに復帰する。昼間でも難しいこの曲がり角を、ま
してや前回夜に行き詰まったのは頷ける。 やはりこの部分は夜間に下るのは無理だった様だ。
14時07分目印にしていた天然杉の大木を見つけて東側へと尾根換えをする。
このブナともお馴染みとなった あれ? ヒメシャラ何て無かったけど・・・やはり支尾根に向かっていた
ターニングポイントの天然檜に復帰して右手に下る 上りに貼ったテープを発見し安心する
岩場を通過
14時30分頃から岩場が始まり、ここは慎重に右手に沿って下って行く。岩場も上りと下りでは景色が違う。上から下るとそ
のまま絶壁まで進んで行き詰まったりして引き返す。15時06分何とか岩場をクリアして気が緩み、右手の支尾根へ入りかけ
て尾根へと軌道修正する。やはり下りには無数の支尾根が現れるので難しい。
尾根に乗った様で一安心 14時30分 岩場の下りに入る
岩棚を進むと行き詰まり引き返す もう一段岩場を下り右手から迂回する
15時06分 岩場の核心部を下りきる 15時10分 尾根の括(くび)れ部を通過
ワイルドな細尾根をドンドン下る あれ? 振り返ると崖がある 右に行き過ぎた様だ
15時26分 尾根に復帰する 上りに歩いた植林帯が現れてホッとする
植林帯を下る
岩場をクリアしてから15時10分細尾根の括れを通過した後、少しルート修正を行い暫くすると植林帯に入る。この辺りの植
林帯は尾根部が比較的分かり易いのでルートを大きく外す事もなかった。
分かりにくくなる。所々に上りで雑木に貼ったテープが現われ安心する。
こんな細尾根に植林するってどういう事? 材木を切り出す時にブル押しの作業道を付けるのだろうか
この辺りの笹薮には獣道は無い 地形が平らな場所にルート目印を貼って来たテープを確認する
境界調査杭も良い目印になる 向かいの岩茸山は岩山で馴染みが無く進路の目印にならない
正面に瀬戸川を挟んで「岩茸山」(いわたけやま)1,174.89mの岩山稜線が見えるが、全体的に同じようなゴツゴツし
た稜線なので下山の目標に絞れる形は無かった。所々に残置したテープを確認しながら瀬戸川へと藪を分ける。
16時56分上りで見た大岩に裏側から下って来たが、ここまで下ると後は藪も薄くなり瀬戸川渓谷のせせらぎも聞こえてくる。
17時05分右手に高さ10m程の大岩の横を通過すると瀬戸川渓谷が見えて来た。
背伸びをして雑木に貼ったテープを確認 う〜〜む あと少しの辛抱じゃ〜
踏んずけても蹴っても粘っこい笹に跳ね返される 正面は岩茸山だろう あちらも急斜面だ
あれ? 大岩の裏側から下山した もう神社は近い 大岩を過ぎると笹が薄い場所を選んで下るのがルートとなる
下側の大岩を通過する 瀬戸川渓谷が下に見えて来た
17時10分大山祇神社に帰り着き無事を感謝してお参りする。渡渉場所を少し下流側に変えて対岸に渡り神社を見上げる。
神社の屋根が下に見える 17時10分 大山祇神社に無事下山のお参りをする
瀬戸川渓谷にひっそりとある「大山祇神社」(山ノ神) これが三角点名の名付け親になったのだろう
コンクリート橋脚跡の上流側を渡渉する 水が澄んでとても美しい
瀬戸川渓谷の対岸から今回の出発点「大山祇神社」を仰ぎ見る
参道を道路に向かって上がる 17時20分道路わきの鳥居を潜って今回の山行を終える
覚悟していた通りの大藪で往復距離4km、標高差600m弱の割には上り4時間半、下り4時間もかかった。大藪の為上りと
下りの時間差が余り無かった事実は登山道が無い藪尾根では下りが結構難しい事を体感する。
カシミールソフトを使用したGPSトラックログ図 瀬戸川渓谷
瀬戸川渓谷から剣ヶ岳〜一ノ谷山〜天賓阿礼〜山ノ神ノ森〜大山祇神社がこれで繋がり満足の山行となった